最近小説はな…って嫌厭せずに読んでみてほしい、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」
久しぶりに震えましたわ、本当に。
おススメ度 :★★★★★
キーワード :甘酸っぱい、感動、音楽、ピアノ
【こういう人にお勧めします】
・最近小説メッキリ読まなくなったわ…という人
・クラシックが好きな人
・純粋ってなんだったっけ、って思っちゃう人
・日本語の良さを再認識したい人
どうもこんにちは。
ましゅ公です。
やっと、このブログの真髄を発揮する時が来たよ!
初めてだから至らないところだらけだけど、よろしくね。
直木賞と本屋大賞をダブル受賞した今作。とあるピアノコンクールを舞台に、10代、20代の少年少女たちの成長が描かれた作品。成長の過渡にある彼らの、他のコンテスタント(出場者)達に影響され、感化され、もがきながらも紡ぎ出す音楽の色は、それはそれはとても個性的で、とても濃い。
あらすじとかどうでもいいんです。
私は、本当、とにかく感動しましたわ。
最近、小説なんてどうでもいいや、って思ってたんだよね。
歳を重ねるにつれ、なんだか小説というものが受け付けなくなってきてね。なんだろう、食事で言う所の「脂っこいもの」?若いときは大好きでも大人になると胃もたれとかしちゃって嫌厭するじゃない。あれみたいなものかもしれなかった。なんか、創られた日常よりもドキュメンタリーの方が面白いって、ビジネス書とか専門書とかの方にシフトしていって。
そもそも恩田陸、という作家さんを以前よく読んでいたというのもある。だからこそ思入れがあったのかもしれなくて、また、たまたまそのときお財布にゆとりがあったから買っちゃったというのもある。ダブル受賞ってそんなにすごいのか、と興味半分で買った節もある。
でも、本当に。
本当にこれは歴史に残すべき作品だと思う。(映画化もするくらいだし)
1000ページを平気で超えてそうな超大作なのに、気づけば3日くらいで読み終わってしまっていた。
そして思ったのである。
「恩田陸すげえわ」と。
何がすごいって?
それは自分の目で確かめてみるべきですよ?
ただ、感じるのが、恩田陸さんの情景を言葉にする力の凄さ。
クラシック・ピアノ、という文字ではなく「音情報」しかないものを、どうしてここまで文章に落とし込めたのか。
実際音楽が鳴っているわけではないのに、そんでもって「ポロロン」「ジャーン」とか擬音語なんて一切書いてないのに(本当に)、ちゃんとした日本語だけで楽曲の躍動感や悲壮感、スケールが読者の目の前まで迫ってくる。
一緒にピアノコンクールで聴いているのではないだろうか、と錯覚さえしかねないほどの情感が伝わってくるのだ。
恩田陸さんてそんなすごい人だったっけ?
昔よく読んでいたときは、登場人物の感情表現の描き方がとても細やかで、それが好きだったんだけども、こんなに情感を言葉にできる人だったとは。
なんというか、作家さんってすげえわ。
あと、いろんなクラシックの楽曲に出会えたのは楽しかったな。
特に「イスラメイ」。ロシアの作曲家、バラキレフが作った「東洋風幻想曲」と呼ばれてるもので、登場人物の一人、風間塵が課題曲として選んだ曲。
世界で一番難しい曲、と言われるそうですよ!
難しい曲といえばリストの超絶技巧とかがよくあげられるけども、これはそんなもの比じゃないくらいに難しそうだ。
幻想、というものがタイトルに付くきょくは、なんだか難しそうなものが多い印象がする。ショパンの有名曲「幻想即興曲」も、早くて細かくて、難易度が高いと言われる。
ラフマニノフにしろ、バラキレフにしろ、ロシアの作曲家って面白い曲をかくなぁ。
まあ、そんなのはどうでもいいんだ。
最近、小説というものに小食気味になっている人たちに、私はこの本を本当にお勧めしたいんだよ。
クサい人間関係、出来すぎたストーリー、御都合主義…確かにこの作品にもあるのだけど、この作品に限ってはそれもまた味だ、と思えてしまう。
そして様々なクラシックに出会いながらも、改めて日本語の奥深さに触れられることができる。
良作ですよ。